11月6日 入院6日目
昨日からの延長で、集中治療室に寝たきり状態である。朝7時半にいつもの朝食だ。
動けないのでベッドの上に机を持ってきて体を起こし、朝食を食べる。空腹を訴え続けている胃袋には、まさに救いの神である。食べた後、大腸の蠕動運動が快調なせいか、おならが止まらなくなり、ナースコールボタンを押して看護師と一緒に歩いてトイレへ直行した。9時に集中治療室から元の410号室に戻され、担当看護師の武田さんが登場。「石原真理子にそっくりと言われるでしょう。写真撮らせてください」とお願いすると、すんなり「若い時はよく言われたけど」と、テレながらモデルになってくれた。
彼女はその後、熱い蒸しタオルで全身を拭いてくれた。すごく気持ちよく感激である。
今日の17時には点滴が取れるらしい。思ったより早く退院出来そうな、そんな雰囲気である。1階のレントゲン室に行くように指示された。「一体何枚撮る気だよ、放射能を浴びるんやで、こっちは!」とやや怒り。
昼食後に尿道に入れてある管が痛くなり、武田さんに「引き抜いていいか?」とたずねると「絶対ダメ。血まみれになるわよ」と言われ、後ほど波多野先生にちゃんと外してもらったが、生まれて初めて味わう強烈な痛さだった。
16時半、点滴がなくなったので、武田さんに外してもらう。5日間連れ添った悪魔のような点滴ともお別れで、大きな開放感を味わった。後は背中に刺さっている、腎臓から尿を出すチューブのみである。これが外されれば退院のめどが立つというものだ。
退院したら、王将で昼間から生ビール大10杯とギョーザ2人前を胃袋に放り込みたい。それくらい肝臓は元気になっているはずだ。いや、待てよ。この入院を機会に断酒するといったのは一体誰だ。私は意志が強い人間ではなかったのか。タバコも止めたほどの輝かしい?実績があるではないか。
いろいろと私の中で問答のやり取りがあった時、いきなり2人の老人がそれぞれの奥さんを伴い入室し、410号室はやにわに満室御礼となるのであった。
担当の看護師がそれぞれやってきては入院案内(ブリーフィングと言うのか?)をおっぱじめた。4日間静まり返っていたこの部屋にも活気が出てきた。
夕食を食べ終わってホッとしたところに、家内、次女は晴菜、三女梓が不意にやってきた。来いといってないのに来られるとありがた迷惑だ。不機嫌な顔になっていた。
それを察し、3人は足早に帰っていった。後から思いっきり後悔した。
何であんな態度を取ってしまったのか、私は馬鹿であると何度も自分に言い聞かせた。