「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」の作者、万城目学のエッセイである。大阪出身、京都大学出で、漫才師のロザンの宇治原と同級生なのである。初め万城目正(まんじょうめただし)のお孫さんかと思ったが、全然別人なのであった。「マキメ」なのである。万城目正のほうは昭和20年代生まれなら、映画愛染かつらの主題歌「旅の夜風」、映画そよ風の主題歌「リンゴの歌」は並木路子が歌って大ヒットしたし、島倉千代子の「この世の花」なんかも作曲した、超有名人なのである。「西条八十作詞、万城目正作曲」と言えば私らの年代は「♪花も嵐も踏み越えて~♪」とつい口ずさんでしまう。
まず、本を手にしたときに、表紙がエッシャーのrelativityという作品のパロディっていうのが気に入った! ちゃんとマキメ仕様になっていて、よく見ると「鴨川ホルモー」のオニや「鹿男あおによし」の鹿や、エッセイの中に出てくるエピソードが盛り込んである。
出所がバラバラなせいか、作家デビューするまでの話とか幼少の頃の話とか旅の話とかがあまりまとまりなく収められている。
マキメ君は文章が上手いし、どことなく品があって、嫌味がないのがいいと思う。まだ30歳を過ぎたばかりなのに、どこか年寄り臭さが漂っているのも面白い。
朝起きるなり井上順の「お世話になりました」を口ずさむなんてどんだけ~!(この曲知ってるのは40代以上じゃないかなぁ?)
工場萌えだったり、「建もの探訪」の渡辺篤史をこよなく愛していたり、ゴ○ブリとの熾烈な戦いがあったり、何度も声を出して笑ってしまった。
旅について書かれた章も面白かった。
ドバイ、ヴェネチア、タイ、カンボジア、カッパドキア、モンゴルと、本当にいろんなところへ旅をしている。それも私の行ったドバイやタイ、そして行きたい、興味のあるところばかりだ。
モンゴルで出会ったトナカイが「鹿男あおによし」の原点になっていたとは驚いた。