今年読んだ本の中で、一番おもしろい内容の本である。永山久夫監修の「日本人は何を食べてきたのか」( 青春出版社)である。2003年の本である。今まで読まなかったことを残念に思う。
日本人が水田耕作をするようになり、米を中心とする食生活になってから、現在の高タンパク、低カロリーといわれる日本食の紆余曲折を描いている。古くは縄文時代にさかのぼり、肉食禁止令(7世紀~明治まで)があったり 外国からの野菜などが日本人の食生活に入り込むなど、いろいろな変遷の中で、確立していったことが、分かる。
特にわれわれが食べている食品のルーツに関する記述が興味深い。日本の食文化の多様さも分かる。以下に、少しだけおもしろいところを抜き出した。
・日本を原産とする野菜は極めて種類が限られている。それもセリ、ミツバ、アシタバ、ウド、ミョウガ、フキ、ゼンマイなど、現代の食卓ではかなりマイナーなものばかりだ。
・ヤマイモは数少ない日本原産の食品の一つである。したがって古代人も食べていたと考えるのが当然だ。とはいえヤマイモはサトイモと違って掘り出すのに手間がかかる。そのため12世紀に書かれた「今昔物語集」には、当時の貴族たちの間で貴重品として扱われていたことが記されているほどだ。
・日本は世界の中で唯一といっていいほど、海水のみから塩を得ている国である。
・武田信玄も味噌を奨励した武将として名高い。今川氏や北条氏に塩止めをされ、上杉謙信に窮地を救われて以来、塩の大切さが骨身にしみるようになった信玄は、塩を確保し保存するための食品として味噌の生産に力を入れるようになる。
・民族学的に見るとまな板を使う文化は日本、朝鮮、中国ぐらいなもので、他の地域ではこれらの国ほどは使われないのだという。それはまた箸を用いる文化圏とも合致しているらしい。
・世界で箸を使うのは朝鮮半島、中国、ベトナムそして日本である。だが、日本以外の国は箸とさじを兼用しており、純粋に箸のみを使用しているのは日本だけだ。
・聖徳太子が607年に小野妹子らを遣隋使として中国に送ったのは有名な話であるが、彼らが中国で収穫してきたものの一つに箸文化があった。
とにかく食に関する豆知識が盛りだくさんで、私の知識ラベルも上昇した。ただし、憶えていればの話だが。