精神科医、なだいなだ氏のエッセイ集を図書館で借りてきて、とりあえず読んだ。

「とりあえず」という言葉はいい加減なひびきをもつが、ところがどっこい、氏の文を読んでいると、とても意味深いことに気づく。目標をもち、きっちりプランをたて、実行する。それは素晴らしいことだが、人生、そうは簡単にいかないことが多い.
「しっかりと」「きちんと」もよいが、その一方で、「とりあえず」という、そんな気持ちをもっている人の方が、人生楽しめるかもしれない。
なお、このエッセイ集のなかに、「経済学者に聞きたい」というタイトルがあるが、ここで述べられる問題意識の鋭さには、はっとさせられるものがあった.
どうやら、氏は「とりあえず」だけで生きているのではないらしい。
本文から抜粋。
まだここが悪い、まだ病気が完全に治っていない、すっかり治ってから人生を再開したいという神経症の患者さんに、
「これまで七年もかかってまだ治らない病気が、すっかり治るのはいつか、きみにわかるかい。誰にもわからないよ。だが、明日や明後日でないことははっきりしているな。それまで生きるのを中止しているか、それとも病気を背負って、七分の力しか出せなくても、とりあえず人生を再開するか、きみはどっちをとる?」
と、質問し、とりあえず生きていくことを勧めてきた。これがとりあえず主義でなくてなんであろう。